シェイクスピアの’ロメオとジュリエット’の中で、修道僧ロレンスは自らのアイデアによって二人を霊廟の中で密会させようと試みます。その方法とは彼女に薬を飲ませて仮死状態に見せかけ、ロメオが到着する直前ジュリエットが目を覚ます様仕組んだものでした。しかし追放されていたロメオにはこの内容が上手く伝わらず、霊廟に着いたロメオはジュリエットが死んだものと思い込んで自殺。目を覚ましたジュリエットもまた死んでいるロメオを呆然と見つめながら短剣で命を絶つのです。追放されていたロメオになぜこの内容が伝わらなかったのか…..それはロメオの従者がペストの検閲で足止めをくらい、彼に届く筈だった手紙が間に合わなかったからなのです。
シェイクスピアは16世紀の終わりに流行ったペストをこの作品中で巧みに用いた訳です。因に今から約100年前の所謂スペイン風邪では、数多くの著名人達がその命を落としています。画家ではクリムトやエゴン・シーレ、詩人のアポリネール、社会学者のマックス・ウェーバー。そしてピアニストではリストの高弟で巨匠クラウディオ・アラウの師でもあったマルティン・クラウゼ。作曲家では英国の大家、サー・ヒューバート・パリー。彼の名はウィリアム・ブレイクの詩に作曲された名作’イェルサレム’で広く知られています。これら過去の巨匠達を回想しながら、今日そして今後の趨勢を慮りつつ前進していきたいと考えています。
’嵐の中でも時間(とき)は経(た)つ’…… (シェイクスピア:’マクベス’)