ウクライナ出身の世界的芸術家を挙げるのであれば、まさにそれは綺羅星の如く枚挙にいとまがない。そして彼らの殆どがその人生を戦いに翻弄され続けてきたこと、これもまた周知の事実である。
20世紀に入るとその初頭のロシヤ革命、そして二つの世界大戦…..またソヴィエト時代では特にスターリン下における価値なき無差別なイデオロギーによって多くの音楽家たちが苦しめられてきた。
古くはゴーゴリの幻想性からニジンスキーの舞、プロコフィエフの洒脱かつアルチザンの筆、そしてエルマン・トーンで鳴らしたミッシャのヴァイオリンやホロヴィッツが醸し出す魔法の音色….しかし彼ら固有のエトスとソノリテは歴史に堤防を築き常にこれらを凌駕し続けてきた。
時にボルシチの甘味と酸味にウクライナの空気を想う時、一詩人の言葉がふと頭をよぎる…
「歴史とは人類の科学が作成した最も危険な産物である__」
~ポール・ヴァレリー~