2024年2月8日には92歳を迎えるジョン・ウィリアムズ(1932~)が来日した。
彼は長らく空席であったボストン・ポップス管弦楽団の首席首席指揮者を1980年から1993年まで務め、現在はこのボストン・ポップスの名誉指揮者でもある。来日の理由は当時彼をボストン・ポップスの首席指揮者へと任命した高齢の小澤征爾(1935~)への励ましと感謝である。
筆者はかつてジョン・ウィリアムズの作曲様式とその影響について下記の様な概要を公開したがそれは次のようなものである。
「彼は18世紀ウィーン古典派のオーケストレーションから近現代に至るすべての作曲家の語法を手中に収め、そのパレット上の色彩は数限りない。『未知との遭遇』でのJ.ウィリアムズは、ディズニー映画の名曲『星に願いを』をパロディとして挿入しながら、ドビュッシー(1862~1918)やラヴェル(1875~1937)といったフランス近代・印象主義の作曲家をはじめ、現代フランスの作曲家メシアン(1908-1992)や前衛的な各種作曲様式を、『E.T.』では近代ロシアの作曲家プロコフィエフ(1891~1953)のスタイルを、また『ジョーズ』ではストラヴィンスキー(1882~1971)の語法をそれぞれに消化し、他の映画でもスクリャービン(1872~1915)、バルトーク(1881~1945)、ショスタコーヴィチ(1906~1975)、そしてシェーンベルク(1874~1951)に発しマーラー(1860~1911)に至る、音色旋律やジャズの影響までもが強く認められる。こういった卓越した作曲技法が旋法性や複調、そして屈指のオーケストレーションとの相乗効果によって空間的、立体的、また宇宙的な印象をもたらしている。またさらにその原点…それは1916年に完成されたイギリスの作曲家グスタフ・ホルスト(1874~1934)の管弦楽作品、組曲『惑星』)にまで行き着くことができる…..」今回彼の代表作「スター・ウォーズ」を聴きながら更に脳裏をよぎった作品2点をこれに少々付記したい。
一つ目はプロコフィエフの「スキタイ組曲(アラとロリー)」最終楽章、そしてもう一つはコルンゴルト(1897~1957)の映画音楽、中でも「キングスロウ」で、特に後者は米国大統領もつとめたロナルド・レーガンが主演した作品として良く知られている。コルンゴルトの名はハリウッドの映画音楽作曲家のみではなく、今日では大ヴァイオリニスト、ハイフェッツ(1901[1899]~1987)が委嘱したヴァイオリン協奏曲でその名は音楽史上に刻まれている。コルンゴルトが担当した映画諸作品からの影響は特にオーケストレーション、そして和声法に顕著に認められるだろう。